はじめに:後期の学費、大丈夫ですか?
9月から後期の授業がスタートし、多くの大学では後期分の学費・授業料の納入時期も重なってきます。「実家からの仕送りが急に減った」「親が仕事を辞めた・失業した」「災害で家が被害を受けた」——こうした事情で家計が急に苦しくなり、学費や生活費の工面に困っている大学生は少なくありません。
そんなとき、絶対に手を出してはいけないのが「闇バイト」です(この危険性については「お金が欲しい大学生ほど狙われる。”闇バイト”を見抜く5つのサイン」で詳しく解説しています)。家計が急変したときにまず調べてほしいのが、日本学生支援機構(JASSO)が用意している「家計急変」に対応した奨学金制度です。
この記事では、JASSOの公式情報をもとに、家計急変時に使える奨学金制度の種類・条件・申込みの流れを整理します。あわせて、すでに奨学金を借りている人向けの「返還が苦しいときの減額返還制度」も紹介します。
※本記事の情報は2026年9月時点でJASSO公式サイトに掲載されている内容をもとに作成しています。制度の詳細・最新の金額や利率、対象校の確認は、必ずJASSO公式サイト(jasso.go.jp)または在学する大学の奨学金窓口でご確認ください。
1. 家計急変時に使える奨学金は大きく分けて2種類
JASSOの奨学金には、大きく分けて「給付型(返還不要)」と「貸与型(返還が必要)」があります。家計急変時にはそれぞれに対応した特別な仕組みが用意されています。
(1)家計急変採用|給付奨学金(返還不要)
保護者の失業・倒産・死亡・災害など、家計が急激に悪化した場合に、通常の選考時期を待たずに申し込める給付型奨学金です。返還の必要がない点が最大の特徴です。
JASSO公式サイトによると、家計急変採用は「年間を通じて随時申込みを受け付け」ており、支給開始は原則として申込みを行った年月からとなります(進学前に家計急変の事由が発生した場合は、進学後3か月以内に申し込めば進学した年月から支給開始となる特例もあります)。
ただし、対象となるのは「給付奨学金の対象校(確認大学等)」に限られるため、自分の大学が対象かどうかは文部科学省または大学のホームページで確認が必要です。申込みは新規の方と、すでに給付奨学金を受けている方で手続きが異なるため、まずは在学している大学の奨学金窓口(学生課など)に相談することが第一歩になります。
(2)緊急採用・応急採用|貸与奨学金(返還が必要)
家計急変の事由が生じた場合に、通常の貸与奨学金を随時申込みできる制度です。
- 緊急採用:無利子の「第一種奨学金」に相当する扱い
- 応急採用:有利子の「第二種奨学金」に相当する扱い
こちらも「年間を通じて随時申込みを受け付け」ており、家計急変が起きたタイミングで動けるのが特徴です(進学前の事由発生については別途申込期限があります)。申込みには個人信用情報の取扱いに関する同意書の提出なども必要です。
申込みの大まかな流れは次の通りです(JASSO公式サイトより)。
- 家計急変の状況を証明する書類・収入関係書類を準備し、在学する学校の奨学金窓口に相談する
- 学校から申込用紙(マイナンバー提出に関する同意書等)を受け取り、必要書類(住民票やり災証明書等)を揃える
- 学校が指定するインターネット上のシステム(スカラネット)から、学校が定める期限までに申込みを行う
- マイナンバーをオンラインで提出し、同意書は郵送でJASSOへ送付する
いずれの制度も「まず在学している学校を通して申し込む」のが大前提です。オンラインでJASSOに直接申し込むことはできないので、学費や生活費に困ったら、後回しにせず早めに大学の奨学金窓口・学生相談窓口に相談しましょう。
2. そもそも奨学金の基礎:給付型と貸与型(第一種・第二種)の違い
家計急変時の制度を理解する前提として、通常の奨学金の仕組みもおさらいしておきます。
給付型奨学金(返還不要)の支給額の目安
JASSO公式サイトの「給付奨学金の支給額」ページによると、大学・短期大学・専修学校(専門課程)の月額支給額(住民税非課税世帯等の所得区分に応じた第1〜第4区分)は次の通りです。
国公立大学等
- 第1区分:自宅29,200円/自宅外66,700円
- 第2区分:自宅19,500円/自宅外44,500円
- 第3区分:自宅9,800円/自宅外22,300円
- 第4区分(多子世帯限定):自宅7,300円/自宅外16,700円
私立大学等
- 第1区分:自宅38,300円/自宅外75,800円
- 第2区分:自宅25,600円/自宅外50,600円
- 第3区分:自宅12,800円/自宅外25,300円
- 第4区分(多子世帯限定):自宅9,600円/自宅外19,000円
区分は世帯の収入状況によって決まり、区分が上がる(数字が小さくなる)ほど支給額が大きくなります。自分がどの区分に該当するかは、JASSOの「進学資金シミュレーター」等で目安を確認できます(正確な区分は実際の申込み・審査で決まります)。
貸与型奨学金:第一種(無利子)と第二種(有利子)
- 第一種奨学金(無利子):大学生の場合、国公立大学の自宅通学で月額20,000〜45,000円、自宅外通学で20,000〜51,000円などから選択(私立の場合はさらに上限が上がります)。無利子な分、成績基準や家計基準がやや厳しめです。
- 第二種奨学金(有利子):大学・短期大学・専修学校(専門課程)ともに、月額20,000円〜120,000円の範囲で10,000円刻みで選択可能(私立大学の医・歯学課程等はさらに増額可)。第一種より基準が緩やかな一方、卒業後は利息を含めて返還する必要があります。利率は貸与終了時に固定するか、市場金利に応じて見直されるかを選べる仕組みになっており、時期によって変動するため、最新の利率は必ずJASSO公式サイトの利率ページで確認してください。
ポイントは、第二種(有利子)は「借金」であるという意識を持つことです。生活費の不足分をなんとなく多めに借りてしまうと、卒業後の返還負担が重くなります。必要最小限の金額を借りる、または給付型・第一種を優先して検討することをおすすめします。
3. すでに奨学金を借りている人へ:返還が苦しいときの「減額返還制度」
在学中だけでなく、卒業後に返還中の家計が苦しくなるケースもあります。JASSOには、返還額そのものを減らせる「減額返還制度」があります。
公式サイトによると、対象となるのは経済的困難・災害・傷病などにより返還が困難な人で、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 延滞していないこと
- 口座振替(リレー口座)に加入していること
- 月賦返還を選択していること
所得の目安は、給与所得者の場合「年間収入金額400万円以下」(扶養する子どもが2人いる場合は500万円以下、3人以上で600万円以下)、給与以外の所得を含む場合は「年間所得金額300万円以下」(同様に扶養人数に応じて上限が上がる)とされています。
減額の程度は、月々の返還額を「2分の1、3分の1、4分の1、3分の2」のいずれかに減らすことができ、その分返還期間が延長されます。1回の願い出で適用されるのは最大12か月ですが、再度の願い出で延長可能で、通算適用期間は15年(180か月)が上限です。返還予定の総額自体は変わらない(減った分は後ろ倒しになるだけ)点には注意しましょう。
なお、返還そのものは「貸与終了月の翌月から数えて7か月後」に口座振替でスタートするとJASSO公式サイトのFAQに明記されています。例えば3月に貸与が終了(卒業)した場合、10月から返還が始まる計算です。返還開始前に案内が郵送されてくるので、住所変更をした場合は必ずJASSOに届け出ておきましょう。
4. 家計が苦しいときにやってほしい3つのこと
- 一人で抱え込まず、まず大学の窓口に相談する:奨学金の緊急採用・家計急変採用は、在学する学校を通してしか申し込めません。学生課・奨学金窓口・学生相談室などに早めに相談しましょう。「大学生でお金がないときどうする?金欠になったら最初にやるべき10のこと」もあわせて確認してみてください。
- 固定費の見直しなど、できる節約から始める:奨学金の審査・入金には一定の時間がかかります。並行して、スマホ代や光熱費などの固定費を見直すことも有効です。具体的な方法は「【一人暮らし大学生向け】固定費を今月から下げる5つの方法」で解説しています。
- 絶対に「闇バイト」やSNS経由の怪しい高収入話に頼らない:お金に困っているときほど「即日高収入」をうたう闇バイトやSNS投資詐欺の誘いに注意が必要です。合法的な支援制度を優先して検討しましょう。手口は「闇バイトを見抜く5つのサイン」「SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺を見抜く5つのサイン」で解説しています。
まとめ
家計が急に苦しくなったとき、JASSOには「家計急変採用(給付・返還不要)」と「緊急採用・応急採用(貸与・返還必要)」という2種類のセーフティネットが用意されています。いずれも申込みの窓口は在学する大学であり、対応は早ければ早いほど選択肢が広がります。すでに奨学金を借りていて返還が苦しい人は「減額返還制度」も検討できます。
「お金がない」と感じたら、まずは大学の窓口とJASSO公式サイトを確認し、正規の制度を頼ることが何よりの近道です。
あわせて読みたい関連記事
- 大学生でお金がないときどうする?金欠になったら最初にやるべき10のこと
- 【一人暮らし大学生向け】固定費を今月から下げる5つの方法|スマホ・電気・水道を見直すだけで年間数万円変わる
- 大学生必見!どこまで働いたら損する?アルバイトの税金・扶養の仕組みを2026年版で解説
- 【令和8年分】大学生バイトの扶養控除等申告書の書き方|勤労学生控除でいくら得する?記入例つき
- お金が欲しい大学生ほど狙われる。”闇バイト”を見抜く5つのサイン
- お金が欲しい大学生ほど狙われる。SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺を見抜く5つのサイン
参考・出典(JASSO公式サイト)
- 家計急変採用-給付奨学金(返還不要): https://www.jasso.go.jp/shogakukin/moshikomi/rinji/kakei_kyuhen/index.html
- 緊急採用・応急採用-貸与奨学金(返還必要): https://www.jasso.go.jp/shogakukin/moshikomi/rinji/kinkyu_okyu/index.html
- 貸与奨学金(緊急採用・応急採用)の申込み方法: https://www.jasso.go.jp/shogakukin/moshikomi/rinji/kinkyu_okyu/moushikomi.html
- 給付奨学金の支給額: https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/kyufu/kingaku.html
- 第一種奨学金の貸与月額(平成30年度以降入学者): https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_1shu/kingaku/2018ikou.html
- 第二種奨学金の貸与月額: https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_2shu/kingaku.html
- 減額返還制度の概要: https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/gengaku/seido.html
- 奨学金の返還はいつから始まりますか(FAQ): https://www.jasso.go.jp/faq/shogakukin/moshikomi/kaigai/saiyochu/1190515_2696.html
