この記事を書いているのは、まさに「返還スタート」のタイミング
日本学生支援機構(JASSO)の公式サイトでは、2026年10月時点でこんな案内が出ています。
2026年3月に貸与終了・在学猶予終了した方は、今月10月27日(火曜日)から返還が開始されます。
つまり、今年3月に大学を卒業して奨学金(貸与型)を借りていた人の多くは、ちょうど今月から返還が始まっているということです。在学中は「将来の自分の話」だった奨学金の返還が、いよいよ現実の家計の話になります。
この記事では、JASSOの公式情報をもとに、①返還はいつからどんな方法で始まるのか、②毎月の返還額や返還期間はどう決まるのか、③返還が苦しいときに使える制度、④延滞した場合に何が起きるのか、を整理します。すでに社会人になった人はもちろん、まだ在学中で「将来どのくらい返すことになるのか」が気になる人にも役立つ内容です。
なお本サイトでは以前、奨学金を「借りる側」の制度(給付奨学金の金額や貸与の仕組みなど)を取り上げたことがありますが、今回はその続編として「返す側」の仕組みに絞って解説します。
返還はいつから始まる?
JASSOの案内によると、貸与が終了した(=多くの場合、大学を卒業した)年の3月から数えて、その年の10月27日が返還開始日の目安になります。つまり、卒業してから約7か月の猶予期間があるということです。在学中に留年などで「在学猶予」を使っていた場合も、その猶予が終了したタイミングを基準に同じ流れで開始日が決まります。
返還方法は、指定の口座(リレー口座)からの自動引き落としが基本です。毎月27日が振替日で、前営業日までに口座に返還額分の残高を用意しておく必要があります。27日が土日祝の場合は翌営業日になります。「気づいたら残高不足で引き落とせず延滞扱いになっていた」という事態を避けるため、社会人1年目で収入が不安定な時期こそ、毎月の残高確認を習慣にしておきたいところです。
住所や電話番号、勤務先の変更があった場合は、在学中から使っている「スカラネット・パーソナル」で自分で変更手続きをする必要があります。手続きを忘れると、JASSOからの重要な連絡(猶予の案内や延滞の通知など)が届かなくなるリスクがあるので注意しましょう。
毎月の返還額・返還期間はどう決まる?
返還額と返還期間の決まり方は、奨学金の種類(第一種/第二種)と選んだ返還方式によって変わります。
定額返還方式(月賦・月賦/半年賦併用)の場合は、借りた総額を「奨学金返還年数算出表」の基礎額で割って返還年数を出し、12か月をかけた回数で均等に返還していく仕組みです。JASSOが示す例では、月3万円を4年間借りた場合(総額144万円)、144万円÷11万円≒13.09となり、端数を切り捨てた13年間、156回でこの総額を返還する計算になります。半年賦を併用する場合は、月賦分はそのまま、半年賦分の回数は年数×2回になります。
所得連動返還方式(第一種奨学金のみ選択可)の場合は、前年の地方税の課税対象所得から、扶養する子ども1人につき33万円を差し引いた金額に9%をかけ、12で割った額が毎月の返還額になります(1円未満切り捨て)。この金額は毎年10月に見直されるため、収入が上がれば返還額も上がり、収入が低い年は返還額も下がる仕組みです。ただし前年の所得が0円であっても、最低月額2,000円の返還は必要とされています。また返還開始から1年以内(初年度の9月まで)は、定額返還方式の半額相当を返還する経過措置があり、それでも難しい場合は申請により2,000円まで下げられる場合があります。
第二種奨学金(有利子)は、割賦方法に応じた回数で元利均等返還となり、第一種と第二種を併用していた場合は、貸与終了月が同じであれば合計額をもとに返還回数が計算されます。
返還が苦しいときに使える制度
返還が難しくなったときにまず知っておきたいのが「返還期限猶予」と「減額返還」という2つの制度です。
返還期限猶予は、経済的な困難や失業、災害、傷病、生活保護受給中、産前・産後休業や育児休業中などの事情がある場合に、一定期間返還を先送りできる制度です。JASSOの案内では、経済困難・失業など一般的な事由による猶予は通算10年(120か月)が上限とされていますが、災害・傷病・生活保護・産前産後休業や育児休業・海外派遣などの事由では、この10年の上限が適用されないケースもあるとされています。ポイントは、延滞してしまう前に申請して承認を受ける必要があるという点です。延滞してからでは使えない(延滞分は別扱いになる)ため、「今月払えなさそうだ」と分かった時点で早めにJASSOまたは学校の窓口に相談することが重要です。
なお、返還期限猶予はあくまで返還時期を先送りする制度であり、元金や利息そのものが免除されるわけではない、とJASSOは明記しています。
減額返還制度は、毎月の返還額自体を一定期間減らして無理のない範囲で返還を続けられるようにする制度です。猶予のように「先送り」ではなく、少額ずつでも返還を継続したい人向けの選択肢といえます。適用条件の詳細は申請時期や収入状況によって変わるため、断定的な数値はここでは挙げません。利用を検討する場合は、JASSOの公式サイトの該当ページで最新の適用条件を必ず確認してください(データ確認不可)。
延滞するとどうなる?個人信用情報機関への登録
奨学金の延滞でもっとも注意したいのが、個人信用情報機関への登録です。JASSOの公式案内によれば、延滞が3か月以上になると登録の対象になります。より具体的には、新たに返還を開始した人の場合、返還開始から6か月が経過した時点で延滞が3か月以上あれば登録対象となり、それ以降は毎月この基準で判定されます。
登録対象になるのは、「個人信用情報の取扱いに関する同意書」を提出している人です。2009年4月以降に奨学金の貸与を受けた人は、この同意書の提出が必須とされています(つまり、現在20代前半〜30代前半で奨学金を借りていた人の多くは対象になります)。登録される情報には、氏名・生年月日・住所・勤務先などの本人情報に加え、貸与金額や返済状況(延滞・代位弁済・完了など)が含まれ、毎月更新されます。延滞を解消すれば、その旨も登録されます。
そして見落とされがちなのが登録期間です。登録情報は、延滞を解消して「完了」した時点ではなく、返還そのものが完了してから5年後に削除されるとされています。つまり、延滞した事実は、その後きちんと完済しても、しばらくの間は個人信用情報として残り続けるということです。クレジットカードの新規契約や住宅ローン・自動車ローンの審査などに影響し得る情報であるため、「とりあえず数か月滞納してもいつか返せばいい」と軽く考えず、払えなくなりそうな時点で猶予・減額制度の相談を先にする方が、長い目で見て有利だといえます。
まとめ:在学中・返還開始直後にやっておきたいこと
奨学金の返還は、①開始時期(卒業後約7か月後が目安)、②返還額・期間の決まり方(定額か所得連動か)、③苦しいときの猶予・減額制度、④延滞した場合の信用情報登録、という4つのポイントを押さえておくだけで、心構えがだいぶ変わります。在学中の人は、今のうちにスカラネット・パーソナルで自分の貸与総額と返還方式を確認しておくと安心です。すでに返還が始まっている人は、口座残高の管理と、苦しくなったときに「待ってもらう」のではなく「早めに相談する」ことを意識してみてください。
